独男、日々を飛ぶ

独りぼっち男の日常

パンドラと箱

 

自分が高校生くらいの頃、野島伸司脚本で「世紀末の詩」というドラマがありました。



1話完結型のドラマだったのですが、強く印象に残っている回がありまして。



中年男性と若くてキレイな目の見えない女性のお話し。
男性を斉藤洋介が演じ、盲目の女性を遠山景織子が演じていました。


あらすじ


冴えない日々を送る中年男(コオロギ)と、美人だけれど目の見えない女性。
ふとしたことから知り合った二人は互いに惹かれ交際を始めます。


古いアパートで幸せに暮らす二人。
ある時手術をすれば彼女の視力が回復すると男は知ります。
ただし、多額の手術代がかかる。


女性はこのままでいいと言いますが、
男はどうしても目が見えるようにしてあげたいと思います。


そして学生時代にパントマイムをやっていた男は、その経験を活かしバイトで大道芸を始めました。
彼女の目の手術費用を作ろうとしたのです。


そして、無事に手術は成功。
男は大喜びで彼女の元へ。


目が見えるようになった女性は男にこう言います。


「あなたがコオロギさん?想像していた顔と少しちがった」


彼女は男と住んでたアパートへ一緒に戻るのですが・・・


見えるようになった世界は、あまりにも想像と違っていたようです。


中年男の姿に安いボロアパート。


目の手術をしてくれたイケメン医師からあの男性とはどういう関係ですか?と聞かれ、
彼女はこう言います。


「福祉のボランティアの方です」


書置きを残して、彼女はこっそり家を出ました。
そしてその医師と婚約してしまいます。



しかし男は彼女を責めません。
夢を見たと思って諦めますと。
仕方ないと。


何事もなかったかのように、男は大道芸をまた始めます。
雨の中、ピエロの格好で古時計のパントマイムを。






手術をしなければ、中年男性は一生女性の側にいられたことでしょう。


彼は、開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまった。


手術なんてやめておけばよかった。
余計なものが見えるようになったから。
欲と名の付くほとんど全てのものが目に見えるもの。
彼女はそれを見ずに済んでいた。


愛する彼女の目が見えるようになってほしい。
自分と同じ景色が見せたい。


でもそれと引き換えに愛を失った。


人間は見てはいけないものがある。




こんな物語でした。



見た後、後味の悪さしか残らない回でした。



僕もパンドラの箱を開けた経験があります。
結果は興梠さんと同じでした。
そこには絶望しかありませんでした。