敗者とスポットライト
僕はハッピーエンドではなくバッドエンドで終わることの多い北野映画が好きなので、そこから有名になった大杉連さんの死去のニュースは寂しいものがありますが、非常に不謹慎な発言であるということを自覚したうえで言わせていただくと、
夜まで普通に仲間と食事をして楽しい時間を過ごし、その数時間後には急性心不全で急死するという死に方は、きわめて羨ましい逝き方です。
いわゆる「ピンピンコロリ」というやつです。
もちろん亡くなる直前は痛みや苦しみがあったでしょうが、癌だったら数か月~数年苦しまなくてはならないところ、大杉さんは数時間で済んだ。
とはいってもご家族もいらっしゃいますし、ファンの方々はもっともっとその姿を長く見たかったはずですが、そんな人に限って周囲にサヨナラを言う時間もなくコロっと逝ってしまい、僕みたいな独男はサヨナラ言う人もいないのに無駄に長く苦しんだりする。
人生とは皮肉なものだ。
オリンピックの今日の女子スノーボードビッグエア決勝でメダル獲得ならなかった鬼塚雅選手の試合後のインタビューを見て、もらい泣きしてしまった。
テレビカメラの前で嗚咽を挙げて泣く姿は美しかった。
全力で闘った結果だ。
美しい敗者。
それに比べ、羽生選手がエキシビジョンのためメダル獲得後初めて練習会場に姿を見せたことをわざわざニュースで放送する必要はあるのだろうか。
オリンピックなのにエキシビジョンがあることの意味も分からないし、その練習風景をニュースで取り上げる意味も解せない。
羽生選手の2連覇はすごいけれど、負けていった選手や人気のない競技をメディアはなぜもっと取り上げないのか疑問でならない。
日本のメディアがやっていることも北と南のおままごとみたいな小競り合いと何ら変わりないと思う。
オリンピックですら華やかなものや人気のあるものにしかスポットライトは当たらない。
人生の縮図と同じだ。