独男、日々を飛ぶ

独りぼっち男の日常

秒速と5cm

朝起きてトイレ掃除と洗濯をし、週に一度の買い出しを済ませるともう他にやることがない。
鎖と首輪で繋がれた外飼いされている犬のように、息をするくらいしかない。


普段から散らからないようにしているし、散らかるほど物も持ってない。
だから週末に片付けとか別にない。


夕方には毎週末ルーチンとなった、産直へ半額の惣菜を買いに行く。
明日からの昼の弁当に持って行くおかずと、今晩のおかずを調達するため。

 

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今日は凄まじかった。



店へ到着すると、ざっと見ても10人以上の年寄りがお惣菜コーナーに群がっている。

年齢的には自分などまだひよっこみたいなものだ。

そして時間となり半額シールが貼られ始めると、どこにそんな力があるのかと思うほどの秒速でシールが貼られたお惣菜が棚から姿を消す。
わずか5cmの距離での戦いだ。


自分もからあげとイカフライに手を伸ばす。
からあげは楽勝であったが、イカフライは5cmの差で他のハイエナの手が伸びてきたところでギリギリGETした。


半額シールが貼られ始めた30秒後にはあらゆるお惣菜が姿を消していた。
到着があと数秒遅ければ今日の狩りは失敗に終わっただろう。



他におからとポテトサラダも手に取り、半額4つで450円のお会計。


年寄りのハイエナたちよ。
ごめんな。
俺にも生活があるんだ。


そう心でつぶやく。


この世は弱肉強食。


年寄りのハイエナどもよ。
エサは譲れないんだけどさ。
もし長生きしたかったら、いつでも俺の命を差し出すよ。


生きてる意味がないから、こんな命でも良かったらいつでも。