個人情報と黒い空
自分の病気のことについては前に何度か触れています。
私は病気のことは家族をはじめ、会社にも伝えていません。
私の勤める会社は、給料明細や医療費明細、有給や各種手当の申請といった個人情報は、社内のネットワークパソコンで全て管理されていて、パソコンで各個人に与えられた暗証番号を入力してログインし、有給を申請したり明細を閲覧して必要なら自分で印刷するというようなシステムになっています。
というか、今はどこの会社もみなそうなのでしょうか?
印刷された給料明細が茶封筒に入って渡される、といったようなシステムはもう古いのでしょうか。
今日会社でそのパソコンから医療費明細を印刷しようとしたところ、なぜか私が使っていたパソコンからの印刷が調子悪く、データが飛ばずに印刷が出せませんでした。
直属の上司に相談したところ、「じゃあおれのパソコンからだせば」と言ってくれ、私の目の前でちゃちゃっと自分のパソコンをいじり、私の名前の書かれた画面を表示させました。
「え・・・・・」
呆然としながらも、動揺を必死に押さえ、
「なんで係長(上司)のパソコンで僕の(個人情報)が見れるんですか?」
と尋ねると、
「係長だからね」
と一言言われました。
全身から血の気が引いていくのが分かります。
そこに立っているのもやっとの思いで平然を装い、印刷だけ手にして部屋を後にしました。
ログインして自分の個人情報を見るためにはパスワードが必要であり、それを知っているのは自分だけです。
そう思っていました。
ですが、直属の上司はどうやら自分の部下の個人情報を閲覧できるようです。
要は、一斉管理されているということなのでしょう。
前にも書きましたが、私は抱える病気の治療のために高額な医療費がかかっており、公費負担を受けています。
そのことを会社の保険担当にだけは伝えないといけないため、書類を提出したり、パソコンから個人情報として申請したりしています。
ですが、その保険担当者とは部署が違うため普段直接顔を合わせるやりとりはありませんでした。
上司がちょっと操作すれば簡単に私のログイン画面を見ることが出来る。
つまり、簡単に私の個人情報を閲覧することが出来る。
医療費明細を見れば高額な医療費がかかっていること、公費負担を受ける保険の申請をしていること。
それら全部。
組織とはそういうものなのかもしれません。
管理上必要なことなのかもしれません。
だけど、何のための個人情報なのだろう。
個人情報の保護。
それは私が普段仕事をしているうえでも、非常に厳しく言われていることです。
でも、私の誰にも知られたくない病気のことを、簡単に知られてしまう状況がある。
現状で上司がそのあたりの私の個人情報をどこまで見て、どこまで知っているかは分かりない。
ですが、そう遠くない未来に上司からこのことで呼び出される日がくるかもしれない。
逃げようとしても、結局鳥籠の中で逃げているだけであって、籠から出ることは出来ない。
そんな気がしています。
ふっとため息をついて少し笑う自分がいました。
帰り道の空がいつもより黒く見えました。